「最近、行きたい展覧会がないな」 なんていってたら蜷川実花の写真展の情報が飛び込んできたんだ。つい先日出版した二冊の写真集「mika」「over
the rainbow」の展示だ。というワケで、早速初日に足を運んでみたよ。
まず会場に着いたら、すごい人だかり。チケットを買うのに、こんなに並ぶのか!と腰が引けかけたんだけど、どうやらサイン会に並んでいる列だったみたいだね。事前に整理券を配布していたようだけど、それにしてはこの行列はチョット異常じゃないかな。そんな、行列を尻目にチケットをあっさりゲットして、展示会場に入ったら、人はほとんどいない....
みんなー、写真、見ようよ。
それで、ゆっくり作品を堪能できたかといえば、そうでもなかったんだ。会場に入るなり、コンパクトカメラで堂々と作品を撮ってる人がいて、それが気になって気になってしょうがなかったんだよね。まず、チケット購入時に、会場内は撮影禁止ですと言われた。そして、展示会場外でサインをしている写真家の周りには警備員がたくさんいて、携帯カメラで撮影しようとしてる人達に注意してまわっていたんだよ。
それが、展示会場内には警備員はゼロ。写真家の肖像権は守られたのかもしれないけれど、肝心の著作権は侵害され放題っだったってワケ。肖像権で食べているのならイイけど、作品を飯のタネにしてるなら、気を使うところが違うんじゃないかしら。
気を取り直して展示の方を見てみようか。壁面には超大型のプリントがズラリで圧巻だったよ。銀塩プリントは全て断ち落としで厚手のアクリル板仕上げ。こだわりの色ノリは、さすがにインパクトがあったね。会場の照明はおせじにも良いとはいえないものだったけれど、それでも、写真集の色はくすんでいると思えるくらいクッキリ、コッテリした色だったよ。どぎつさと紙一重の調色は蜷川実花の真骨頂だよね。正直、ボクはそんなに好きじゃない色なんだけど、実際のプリントで見ると、意外とクリアーな感じがしたね。これは写真集で見ているだけだと気づかなかったかもしれないな。
作品全体の印象は、そんな高級大型プリントが並んでいるせいもあってバブリーな感じ。でも、それがイメージと合っているかというと、必ずしもそうでもないと思えるんだ。なぜか、例えばヘルムート・ニュートンの写真展では、今回の展示よりも小さなサイズだったけど、もっとずっと大きく感じたよ。それは、撮る段階でそのサイズで見せるということを考えているからなんだよね。今回の蜷川の写真は、ただ撮りました、大きく伸ばしました、と見えてしまうんだよ。乱暴に言ってしまえば、無駄に大きいんじゃないかってこと。超弩級の大きさのワリに、イメージが迫ってこないって点ではね。それに、会場自体がもともと展示専用スペースというワケじゃなくて仮設的なものだから余計チグハグな感じを受けたよね。
あと、篠山紀信ばりの壁面一面ロール紙継ぎというのも何点かあったんだけど、これに関してもちょっと言っておくことがあるよ。まず、プリント自体の質の低さ。これは、他のが良すぎるから余計にそう見えてしまうのかな。さらに、それが汚い状態だからちょっと穏やかじゃないよね。以前に開催した東京展からの使い回しなのは分かるけど、これは酷すぎ。継ぎ目がボコボコ、いたるところにポスターカラーでの修正跡。それも結構大きい面積で、だよ。修正するにしても、ポスターカラーはないんじゃない、マットで表面の質感が全然違うんだからさ。せっかくの大きさもこれじゃ安っぽい薄っぺらな描き割りって感じだよね。
笑顔でサインをするのも大変なのだろうけど、ちょっと会場内をチェックしたら分かりそうなものなのにと思っちゃうよ。でも、第一線で活躍する超有名写真家でも、三流の展示会場、スタッフでしか写真展を開けず、サイン会という営業活動に奔走しなければならない現実というものが見え隠れしていたのかもしれないな。
「写真が大好き」と公言してはばからない写真家、蜷川実花。どうかその気持ちを裏切ることのないようにお願いしたいものだよね。写真は、プリントにお金をかければイイってものでもないんだからさ。
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