―――みなさんこんにちは。今回は緊急企画としまして、先日突然自動車事故で亡くなったヘルムート・ニュートンの写真集をとりあげます。JINさんよろしくお願いします。
「よろしくお願いします。まずは偉大なる写真家のご冥福をお祈りします。突然の訃報で驚いたのですが、実はその死を見越したかのように2002年にはそれまでの仕事を総括した大規模な写真展が世界を巡回して開催されました。もちろん日本でも開催され、今回はその時に購入した図録をチョイスしてみました」
―――海外の写真家の写真展図録といいますと、かねてより要注意とおっしゃってましたが今回取り上げる『Helmut
Newton Work』はどうなのか、その辺りからうかがっていきたいと思います。
「そうですね、まず出版社に注目していただきたいのですが、Taschen社と言えばドイツの世界的な写真集出版社ですよね。そして、実は写真展の時にはすでに書店にこの図録のハードカバー版が並んでいました。つまり、『図録』というよりはちゃんとした『写真集』の作りになっているんです。タイトルにも『ヘルムート・ニュートン写真集』とあります」
―――なるほど、図録を作るのではなく、写真集を作ってそれを図録としているのですね。では内容の方も写真集として期待できるのでしょうか。
「もちろんです。元々ニュートンは『SUMO BOOK』という世界最大の写真集を出しているくらい写真を大きいイメージで見せることを良しとしていて、写真展も大判の写真ばかりだったのですが、当然図録の方も判をいっぱいに使ったイメージで満たされていて決して期待を裏切りません」
―――ちゃんと写真家のポリシーに沿った形になっていて魅力的ですね。
「そう、そこなんですよ。写真に限らず大作家の死後の回顧展はよくある話ですが、それは過去の作品を網羅的に展示してあるけれど、作家本人の意図で構成されるワケではないですよね、図録もしかりです。ところが、この図録は写真家の80歳を記念して自ら過去の仕事を振り返ったものなんです。亡くなる2年前ということになりますが、どこか死を予期したかのように思えてなりません。そんな図録です、良くないワケないですよね(笑)」
―――これは図録による写真集と言えどオススメできる写真集なんですね。
「ええ、これまではニュートンのベスト盤と言えば『The Best of Helmut Newton』だったのですが、これはセレクトが必ずしもベストではないという向きもありましたし、近年絶版となってしまいましたので、今回の写真集『Helmut
Newton Work』が新たなベスト盤と言ってよいと思いますね」
―――と、まとまったところで、そろそろお時間のようです。ありがとうございました。
「ありがとうございました」
―――83歳になっても現役で活躍し、最後まで写真家であり続けた男がいました。そんな男が自らの仕事を振り返った写真集です。ヘルムート・ニュートン作『Helmut
Newton Work』。
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