NOVEMBER 14 ,2003



■A Career in Photography / アーヴィング・ペン
No.004
[出版社] Bulfinch Pr.
[判型] B4変形判
[価格] 11,700円 *洋書



―――みなさんこんにちは。今回は、アーヴィング・ペンの『A Career in Photography』を取り上げます。解説はいつもおなじみJINさんです。よろしくお願いします。

「よろしくどうぞ。」

―――今回はまたビッグネームの一冊ですね。

「そうですね、第2回で紹介したリチャード・アベドンと並ぶファッション界の大御所です。そして今回もまた、展覧会の図録が写真集化されたものをチョイスしてみました。実はアベドンの写真集を買った時にはこれも買うと決めていました。例によって古本屋やオークションで探したのですがなくて、洋書の写真集を置いている店を周って、一番安い所で買いました。確かMEDIASHOPだったかな」

――― 一番安いとおっしゃいますと?

「洋書は、為替のレートによって仕入値が変わりますから、店によって値段が違うことも多いんです。特に小売店が独自に仕入れをしている所は値段がバラバラですね。“どの店が一番安い”というものではないので足で探す必要があるわけです。この時お目当ての一冊の本を洋書の棚の中から探すことほど困難なことはない、と思い知ることになりましたね」

―――なるほど。ではそこまでして手に入れた写真集、第一印象はいかがでしたか。

「印象というか、『もっとあるだろ!』という感じでした。この写真集もペンの代表作を収録しているということで購入したのですが、私が知っていたくらい有名なペンの写真が結構載っていなかったり、載っていてもテキストのページにほんの小さく図版として扱われているだけだったりで、残りページが少なくなるにつれ、次をめくるのが恐くなりました(涙)。私は読後感というのを大切にしたいと考えているのですが、この写真集は“つまみ食いだけ”のような残念感が残りましたね」

―――展覧会の図録というと大きい図版がたくさん載っているイメージがあるのですが。

「そうですね、私もそうでした。ただ、海外の図録は必ずしも日本のそれと同じ構成とは限らないようですね。アベドンのものにも共通して言えることがふたつあると思います。ひとつは図版の小ささです。本の判は大きいのに図版は小さいものが多い。もちろん大きい図版もあるのですが、日本の図録は1ページに1〜2枚大きな図版がほとんどのページを占める、そのギャップは大きいですね。写真集ともなればなおさらです。もうひとつは、テキストの量とレイアウトです。普通ならテキストは図録の最初と最後に少し質の悪い紙でまとめてあるものですが、これらは途中にかなりのボリュームのテキストが入れ込んであります。好みもあるのかもしれませんが、これは写真を見るリズムが崩れてしまうのでいかがなものかと思います」

―――写真のイメージ以前のところで辛い評価になっていると思いますが、イメージだけで見た場合はどうでしょうか。

「正直この写真集のペンのイメージはあまりインパクトを受けません。しかし、これはこの写真集が悪いのであって、同じイメージを別の写真集でみるとまた違います。私はワークショップ等で、スライドによって紹介されたものを見ているのが多いのですが、その時のインパクトは絶大でした。イメージの「大きさ」と「流れ」、この二つは写真集には大切な要素だと思うのですが、この調和がこの写真集にはないんです」

―――なるほど。そうすると、今回取り上げた代表作をまとめたという写真集でペンを評価するのは危険だということになりますね。

「その通りです。“作家の代表作をまとめた”だけでは“作家を代表する写真集”にはならないということを知っておいて損はありませんよ。ただ、ではなぜこの写真集が薦められているのかということになるかと思いますが、これは一言で言えば“他にないから”ということなんですね」

―――確かにペンの写真集は少ないですね。

「はい、現在新刊で入手できる写真集は今回の『A Career in Photography』も含めて3冊でしょう。他の2冊は、“トルソ的ヌード”あるいは“静物”と、テーマを限った編集となっているので、確かに代表作を幅広く収めたものと言えば、この写真集になってしまうんです」

―――ファッション写真といえばよく引き合いに出されるペンですが、代表する写真集がこれだけというのは寂しいですね。

「代表する写真集と言えば、現在は絶版ですが『PASSAGE』があります。こちらは間違いなくペンの代名詞となる写真集です。絶版とはいえまだ比較的手に入りやすいので、もしペンの写真集が一冊だけ欲しい、という方はこの『PASSAGE』を探されることを強くオススメします。『A Career in Photography』では、間違いなく満足できずに他の写真集が欲しくなりますから(苦笑)」

―――実体験を活かしたお話で、これから写真集をそろえたいという方にも参考になったと思います。私も洋書と図録を写真集にしたものを買うときは注意するようにします(笑)ありがとうございました。

「ありがとうございました」

―――巨匠の写真集が必ずしも良い写真集とは限らない。しかしそれは図らずも、写真の見せ方の大切さを気付かせてくれることもある。アーヴィング・ペン、『A Career in Photography』。写真展図録による一冊。