―――みなさんこんにちは。名作アルバム第6回は、サリー・マンの『IMMEDIATE FAMILY』です。それではJINさんよろしくお願いします。
「どうも、よろしくお願いします」
―――まず、今回なぜこの写真集を選ばれたのかお聞きしたいと思います。今までのようなメジャーどころとは少し違う系統ですよね。
「そうですね。前回までは写真業界で華々しく活躍する写真家の、ジョブとしての写真が前面に出ているものばかりでした。今回の『IMMEDIATE
FAMILY』は、そのタイトル通り非常にプライベートを感じさせるワークとしての写真集です。実は、自分の子供が生れて、その写真を撮ってもなかなか思うように撮れない、そんなときにお手本とするべく書棚から取った一冊がこの写真集だったんです」
―――あらためて家族写真の手本として見た場合、以前に鑑賞した時と印象が違いましたか。
「はい、違ったと思います。まず、自分が同じ親という立場になって、そして写真を撮ろうという時初めて分かることがありました。当初は自分の子供なのだからいかようにも撮れるとタカをくくっていたのですが、いざ撮ってみるとどこかで見たような所謂「親バカ」写真の量産・・・ これはつまり、かえって自分の子供だからこそ、「こう撮りたい」という既存のイメージから外れることを恐れているんだと思います。子供を冷静に事物として捉えることができないわけです」
―――ところが、この写真集ではそれができていると。
「そうです、肉親のプライベートを見つめる目は確かにそこに存在できているのに、その目は非常に醒めているんですね。そして被写体となっている子供がカメラに向ける視線も、親に向けるそれとは異なっていると思います。照れや親に対する複雑な感情はそこにはなく、じっとカメラを見据える目が、光景があるだけ。それでいてカメラは家族の内側から見ている。どうすればこのような家族になれるのか・・・と、このようなことまで考えさせられますね。以前もスゴイ写真集だと思っていたのですが、自分が同じような環境を与えられて、余計にその写真の深さを実感しました」
―――なるほど、鑑賞者自身が変わると、また写真の見方も変わるということですね。
「ええ、ただ、ここでひとつ気をつけて欲しいのは、“鑑賞者の主観が全てだ”と言いたいわけではないということです。あくまで写真集との対話によって、写真の見方が広がったと捉えて欲しいですね。子供を持たない者の視点と、子供を持つ親の視点、両方を感じることができたのです。そういう意味では、自分の年代や時代背景によっても当然見方は変わり得るでしょう。しかし、新しい見方に固執してもいけません。大事なのは、いつでも写真集に接し続け、異なる見方を経験しそこからまた視野を広げることなのです。」
―――時間を置いて、写真集を眺めてみる。それだけで勉強なんですね。
「それによってまた自分の現実の世界の見方が変わるんです。いやぁ、写真って本当にいいものですね(笑)」
―――かつて、ポルノ論争まで引き起こしたことのある写真集。しかし、その写真集は今でも普通に手に入ります。親である方、一度その子供へのまなざしを体験してみてください。子供を持たない方は子供ができる前にぜひ。なぜこの写真集が版を重ねているのか感じることができるでしょう。サリー・マン『IMMEDIATE
FAMILY』、珠玉の一冊。
|