SEPTEMBER 8 ,2003



■Evidence1944-1994 / リチャード・アベドン
No.002
[出版社] Random House Trade
[判型] B4判
[価格] 1,2160円 *洋書


―――みなさんこんにちは。今回の名作アルバムはファッションの巨匠、リチャード・アベドンの『Evidence 1944-1994』を取り上げます。それではJINさん、よろしくお願いします。

「よろしくお願いします。今回も入手の経緯からお話したいと思います。この写真集もまた集め始めた初期に購入したもので、確かオークションで7,000円くらいでした。やはり人を撮るにはどうすればよいかのお手本にしようとして購入したのですが、前回のナダールの時のような適当な選び方ではなく、ちゃんとリサーチして選びました(笑)」

―――具体的にはどのようなリサーチだったのですか。

「アベドンの名前はすでに本を読んだ中で知っていましたし、イメージもいくつか見たことがありました。実際にwebや書籍で調べてみるとアベドンはファッションポートレートの神様みたいな扱いで、これは一つ代表作を押さえておかねばと思ったんです。そうすると、大抵の情報では今回の『Evidence1944-1994』がオススメ、代表作となっていたわけです。それに“写真集の集め方”みたいなページでも紹介されていて、写真集入門としてもいいらしいということで決めました」

―――写真集の定番として定評があることを知った上での購入だったのですね。では、実際に中身を見ての印象は評判どおりだったのでしょうか。

「 うーん、私は第一印象では必ずしもそうは思わなかったですね。というのも、この写真集は実は展覧会の図録を写真集化したもので、1点1点の写真のサイズが小さいんです。写真集といえば、1ページ断ち落としの写真が並んでいるのが当たり前と思っていましたから、これにはガッカリでしたよ」

―――確かに図版の大きさは大切な要素ですね。では、イメージとしてはどうでしたか。

「イメージですか、これについては文句のつけようがないでしょう。上手いです、素晴らしいです。そんな良い写真でも小さい図版が多いので、余計に大きなもので見たくなってしまうんですよね。ホント写真展でオリジナルプリントを見てみたいと思わせるイメージが目白押しです」

―――なるほど、素晴らしい写真だけに、その図版の小ささが残念ということなのですね。

「その通りです、つまらないイメージなら小さくてもいい、いや、なくてもいいわけですから(笑)」

―――では最後に、そういったことを踏まえて、この写真集を初心者にオススメするならどうですか。

「これは、その人が写真集になにを求めるかにもよりますが。まず先程の理由から、”写真集”というモノとしての満足感を期待する人にはオススメできません。元が写真展の図録なのですから仕方ないでしょう。しかし逆に、”小さい図版でもとにかく数を見たい”という人にはこれ以上のものはそうないかもしれません。当時の掲載雑誌のページごと載っていたり、写真展の様子が写っている写真があったり、もちろんボリュームのあるテキストが載っていたりで、とにかくアベドンのことを知りたい、という向きにもオススメです」

―――もはや生きる伝説となっている写真界の巨匠。展覧会の図録が写真集として出版され、版を重ね続けていることがその証ともなっている。『Evidence 1944-1994』、リチャード・アベドン、伝説の一冊。