DECEMBER 3 ,2004

■メディアとしての写真
No.021
[場所] Carpe Diem
[期間] 2004年10月1日〜11月28日
[料金] 無料



前回取り上げたデュシャン展に行った足で向かったのがこの『メディアとしての写真』だよ。最初に会場に辿り着くまでに多大な困難があったことを言っておかなければならないな。

まず、最寄駅の「緑橋」に着いたら食事をしようと思っていたんだ、でも、日曜で休みの店ばかり、ファーストフード店も見当たらないよ。ならばサッサとギャラリーを見て帰ろうということになったのだけれど、地図を辿ろうにも、途中から地図と道が一致しないんだ。京都で育ったボクにとって斜めの道はネコマタギ...街角にある住所表示だけを頼りに恐る恐る進むしかないボクの背中を、ハラヘリ限界をむかえたツレ合いの視線の棘が容赦なく突き刺さる。手にいやな汗を握りながら進むこと約15分、なんとかギャラリーの看板を発見。ここまで、体感時間は30分を越えていたことも記しておかねばならないね。

駅から徒歩5分は何かの間違いだろ、と誰かに突っ込みを入れつつ、ギャラリーらしい黄色い建物へむかったんだ。でも、シャッターが閉まっている様子。扉にも鍵がかかっていたよ。おかしい、定休日は月火のはずだよ...冷汗が背中を伝う。

そうこうしていると、「あったあった」と子供たちの大声。どうやらこの住所を探しているらしい。子供たちの後に現れたのはギャラリー目当てでやってきたであろう外国人さん。閉ざされた建物を前に途方に暮れるボク達。状況がまだ理解できていない外国人さん。徒労感が漂い始める。

ツレ合いの目を正視できないまま、「サッサと帰ろう」とベビーカーを反転させる。「ああ、神よ」と天を仰ぎ見たその時―――「なにかお探しですか?」果たしてその視線の先には、ベランダで物干しをしているオバさんが、いやさ「神」がいたんだ。「ギャラリーを、でも閉まっているみたいで」と答えると、「その奥ですよ」とのお告げ。

奥って、どこ。それらしい看板や建物は見当たらないよ。指差されるがままに視線を動かすと、広い日本庭園の入口。車が入口を塞ぐ形で停まっていたね。企業の社長かもしくはヤの付く親分の家屋といった感じ。まさか、と尻込みしていると中から外国人らしき人物が出てきて、気さくな日本語で「展示を見に来たの?入って入って、搬出中でゴメンナサイネ」とのこと。

さて、胸をなでおろしたところで展示を見ていこうよ。荒木経惟、森山大道については、点数も2、3点で見せるにはあまりいい作品ではなかったね。森村泰昌の写真は多少なりとも充実してたよ。なかでも、変装撮影セットをトランク一つにパッキングした作品は、先にデュシャンの展示を見ていただけに思わずニヤリ。森村はデュシャン展に写真作品を出すよりもこちらを出したほうが面白かったんじゃないかな。

全体的には、このような有名写真家のオリジナルプリントもあれば、聞いたことのない写真家のシワがよったインクジェットプリントもあるというビミョーな構成。個展を撤去中だった外国人作家はオーナーの友人とのこと。そのオーナーはフランス人と思われる気さくな紳士。開店1ヶ月のこのギャラリーについても色々話してくれたよ。

そう、展示作品以外にも見て欲しいのが建築と庭園。京都ならともかく、大阪のこんな場所でこれだけの個人所有の日本庭園はそう見られないと思うよ。壊されて建売にされるのを見かねたオーナーがギャラリーやユースホステル、レストランとして運営することにしたとか。作品を展示するのももちろんだけど、撮影にも使えそうな場所だと思ったね。

正直、交通の便は悪い所だと思うんだけど、見たい展示があるなら一度は足を運んでみてもいいんじゃないかな。その場合、時間と腹具合に余裕をもって、まったり空間を楽しむのが正解だよ。