DECEMBER 2 ,2004

■国立国際美術館開館記念展 『マルセル・デュシャンと20世紀美術』
No.020
[場所] 国立国際美術館
[期間] 2004年11月3日〜12月19日
[料金] 1,300円(一般)



今回紹介するのは、大阪中之島に新しく完成した国立国際美術館の開館に合わせて行われた展覧会、『マルセル・デュシャンと20世紀美術』だよ。ここは展示室がすべて地下にあるという珍しい美術館なんだけど、子連れでは不便だし展示室の大きさも小さめで国立にしては物足りないというのが第一印象かな。

さて、展示の方はデュシャンの格時代における代表作が軒並み見られたのはよかったね。《彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも》はひび割れのないレプリカ東京バージョン。もちろんあの《泉》もあったよ。あと、《遺作》は、立体映像による再現。これははじめて見る人にはインパクトあったかもしれないけど、大学の講義でイメージを見たことのあるボクにとっては立体映像と言ってもイマイチだったね。完全再現してくれれば面白かったかもね。

今回の展示はデュシャンの作品ばかりではなくて、後の作家によるデュシャンへのオマージュや、デュシャンに影響されて制作された作品も展示されていたんだよね。デュシャンがどれだけ世界に影響を与えたかは計り知れないものがあるのだけれど、影響を受けた人たちの作品は正直どれもたいしたことなかった。

オリジナルという概念に疑問を突きつけたデュシャン。でも例えば、レディメイドという同じ手法を使った後の作家の作品はつまらなくて、デュシャンの手による「オリジナル」は美しくみえる。これは一体どういうことなんだろう。

ひとつ言えるのは、デュシャンはそれまでの美の概念を破壊したのではなく、新しい美の概念を付け加えたということかな。つまり、デュシャンは、レディメイドにもある美を見出していたってこと。例えば《泉》。この便器の置き方、意味、サインの位置、形、これらは周到に計算された構成になっているんだよね。単純に既製品にサインして展示したというだけじゃない、高度に完成された作品なのさ。

他の作家達は、果たしてこのようなことを踏まえて制作に挑んだのか。制作したモノを自ら美しいと思って展示しているのか。それはボクには分かる由もないんだけど、少なくとも展示会場入口にあった《大ガラス》なんてのは何も分かっちゃいないのは確かだね。

ともかく、デュシャンは後にも先にも一人だけなんだと思える展示だったんじゃないかな。色んな意味でね。美術の概念を変えた存在というよりも、特異点として存在したという感じかな。デュシャンに関しては様々な研究がなされて、それぞれの見方があるんだけど、作品を実際に見て感じたことだよ。

見る者の数だけデュシャンがいる。そんなことも狙っていたのかもしれないね。やっぱりスゴイや。