OCTOBER 8 ,2004

■津田明人写真展 MAXWELL STREET
No.017
[場所] BOOK1st梅田店 Living Cafe
[期間] 2004年7月26日〜8月29日
[料金] 無料



前回の土門拳の展示に行った足ではしごして見た写真展が今回紹介する津田明人の『MAXWELL STREET』だよ。でも“ついで”とは受け取らないでほしいな。はじめから見に行くつもりだったし、ひょっとしたら土門のよりも楽しみにしていたくらいの展示なんだからね。

津田明人と聞いても、知っている人はいないかもしれない。なにをかくそう、ボクがいろんな意味で最も衝撃を受けた写真集『路傍の猫』の作者が津田明人そのひとなんだ。気になる人は本人のサイトでチェックしてみてほしい。

さて、展示は「BOOK1st」という本屋に併設されたカフェの壁面を使って行われていたよ。まず席について土門の展示のダメさ加減を一通り弁じた後、一枚ずつゆっくりと見て回る。ここでも少し違和感。ジッと見ているとシャドウ部の細かなドットが原因だと感じた。たぶん、これは印刷の網点なんじゃないかな。ガラスのフレームごしだからよく見ないと気づかないだろうけどね。全く、土門の展示の影響を引きずったような見方で自分でも苦笑するしかないね。

今回イメージのモチーフとなっているのは「犬」。相変わらずその辺の犬猫写真とは一線を隔すイメージだったよ。海外のノラ犬を撮っているのだけど、その暮らしぶりというか、‘犬と成り’まで感じられる。でも犬を主題として撮っているという感じは薄いんだよね、なにか犬を狂言回しとして、何か別のモノを捉えようとしているかのよう。その何かとは誤解を恐れずに言えば、「空間」なのかもしれないな。少なくともボクはその空間に放り込まれて自分の吐く息が白くなるような錯覚がしたよ。

図らずも立て続けに写真をプリント作品とすることを考えさせる展示だったのだけど、結論から言えばこの『MAXWELL STREET』はよかったね。印刷と言ってもとても質の高いものであったから満足度は高かった。展示を見た後、その本屋で確認したのだけれど、この展示はポートフォリオ形式の写真集『MAXWELL STREET』から抜き出したものだったんだ。

―――「凍てつく光り」をテーマとし、オリジナルプリントに近い仕上がりを目指した。

本人がこう語る写真集そのものを展示する。そこからは作品制作への一貫した信念とゆるぎない自信が感じられたね。展示は10点程度だったのだけど、「原則として書店店頭販売はしない」という写真集を会場でもあるBOOK1st梅田店に置いてあり、30点全て見ることができたのも収穫だったよ。