今回訪れた写真展は、2002年に亡くなった写真家ハーブ・リッツの死後初の回顧展となる「ハーブ・リッツ展」だよ。
え、ハーブ・リッツなんて聞いたことないって...まいったなぁ...でも、そんな君でも、黒人を白バックにシルエットでフォルム的に撮った写真や、海水パンツで空中前転をしている男のポストカード、あるいはマドンナの「トゥルー・ブルー」のジャケット写真なんかは見たことあるんじゃないかな。これらの写真を撮ったのがハーブ・リッツってワケなんだ。
会場は、大丸ミュージアム。話はそれるけど、写真展ってちゃんとした美術館であるものは少なくて、殆どはデパートかギャラリーなんだよね。写真美術館ってのはあるけど...また、機会をあらためて考えてみようかな。
さて、いつもの会場レイアウトに展示されていたのは、モノクロームの有名人ポートレート。どこかで見たことのある超有名な写真が目白押しだよ。どんな展覧会でも自分が知っている有名なイメージを見たら満足するという人がいると思うんだけど、そういう彼女を持つあなたにはオススメの写真展じゃないかな。
でもね、写真として見た場合には、全体的にいかにもファッション風という感じだけど、今見るとどことなく新鮮味に欠けるし、ちょっと安定しすぎているとも感じたね。
雑誌のカットやポスターに使われる分には及第点なのだろうけど、それを並べて見せられても、単調な印象になっちゃってるんだ。
ボクの個人的意見を言わせてもらうなら、写真家と呼ばれる人の展示を見た時の印象は大抵、「何でも撮ってやがる」なんだ。それは、私生活の場合もあれば、被写体ジャンルや方法の深さの場合もあるんだけど、「写真が大好きでどうしょうもない」「撮らずにはおれない」といった印象を作品全体が醸し出しているんだよね。
この印象が、このハーブ・リッツ展では非常に希薄だったと感じるんだ。なにか、こう「仕事で撮りました」って感じなんだよね。“WORKS”といったコンセプトならこれでもいいんだろうけど、“回顧展”がこれでは、ちょっと、ネ。
確かに、一枚一枚は美しく完成された良質な作品だよ。でもね、別に質が高い写真が見たいワケじゃないんだ。写真家の人と為り、が見たいんだよ。ましてや、回顧展。写真家の人生が問われる展示さ。偉大な写真家の回顧展がこれではちょっと不満だよね。
ズバ抜けたイメージを作っているワケでもなく、ただ及第点のイメージを量産できるということだけなら、彼がこれほど有名な写真家にはならなかったんじゃないかな。確かに、扱いの難しい有名人を難なく撮れるというのはスゴイ才能なんだろうけど、ただそれだけじゃない、というのは彼の写真が語っているよ。絶対にもっと他にたくさんの未発表写真があるはずさ。
何年か後、次に回顧展がある時は、おそらく世界を巡回するものになる。その時には、没後の作品の整理も進んで、もっと満足できる展示になるはずさ。それに期待するしかないよね。
有名なイメージをただ並べただけのキュレーションはノーサンキュー、だよ。
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