SEPTEMBER 8 ,2003

■岩合光昭写真展 〜極北の大自然と動物たち〜
No.003
[場所] 大丸ミュージアム・梅田
[期間] 2003年4月11日〜4月21日
[料金] 800円(一般)


前回に少し触れたんだけど、篠山紀信の写真展を見に行った時、駅のポスターでみかけてついでに足を運んだというのが、今回紹介する「岩合光昭写真展 〜極北の大自然と動物達〜」なんだ。

この展示でスポットが当てられていた被写体はホッキョクグマなんだけど、「まあこんなもんかな」といった感じ。確かに被写体を捉えるカメラワークに破綻は無いんだけど、ちょっと偉そうに言わせてもらうと、写真としては小さくまとまりすぎかな。デパートでの展示ではどうしても万人受けを狙った自己模倣になってしまいがちなんだよね。これを証明するのは、展示の終わりの方には取って付けたような「日本の猫」「日本の犬」「スノーモンキー」のからの展示。「極北の大自然と動物達」と題打っているのにおかしいと思うよね。

確かに、鑑賞する人は代表作を観ることができて嬉しいかもしれない。でも今回の展示で一番伝えたい焦点がボケてしまうのも事実なんだ。せっかくの北極での仕事なんだからそれだけのものを自信を持ってリリースしてほしいんだよね。

写真としては、さっきも言ったけど上手いんじゃないかな。でも、望遠で切り取ったものが多く、広角のものでもいかにも安全な場所―――例えば取材車の上とかね―――から撮った感じが見え見えだったのが引っ掛かったんだ。岩合は最近TVカメラでの撮影も多く、大掛かりな取材陣を従えての撮影なんだろうけど、それが見え透き過ぎなんだね。

例えば、北極といえば星野道夫がいて、その写真展「星野道夫の世界」を見たことあるんだけど、同じ大丸ミュージアムでの展示でも彼は違った。正直言って撮影技術としてはイマイチ感があったけど、迫力、臨場感は感じられたんだ。被写体と対峙してるって感覚がね、分かる写真だったんだよね。それに対して、今回の岩合は、正に“お茶の間のテレビ感覚”の写真ってところかな。

もちろんどちらが正解というのはないんだ。この写真展だって、一般大衆にウケルにはどうするのがよいか、という面ではたくさんの示唆を与えてくれるよ。ただでさえ野生動物モノは、万人にウケルのは難しいんだから、それだけでもテクニックだよね。

今回の写真展は、写真好きでない動物好きの人でも十分に楽しめるものであることは間違いないよ。
でも、万人にウケル写真が必ずしもイイ写真だとは言えないことも覚えておいて欲しいな。

今回は、きびしいことばかり言ってるけど、それは岩合光昭というビッグネームだから期待も大きかったっていうこと。自分のスタイルに落ち着くのではなく、嬉しい意味で期待を裏切ってほしいものだよね。