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■パリの肖像 ナダール写真集 / ナダール |
No.001 |
[出版社] 立風書房 |
[判型] A4判(函) |
[価格] 7,500円 |
―――記念すべき連載第一回目は、「パリの肖像 ナダール写真集」ということですが、なぜこれをチョイスされたのか、この辺りからうかがっていきたいと思います。それではJINさんよろしくお願いします。
「こちらこそよろしくお願いします。さて、なぜこの写真集を最初に取り上げたかということですが、それは特に影響を受けたとかいうのではなくて、私が最初に購入した写真集だからなんです。だから初回である今回は写真云々というよりは、私が写真集というものに興味を、或いは価値を見出し始めた過程についてお話できたらと思って選んだんです」
―――最初にナダールですか。なんだか古風な感じがしますが、なにかワケがありそうな感じですね。ではその入手に至る経緯なんかを話してもらいましょう。
「当時私はまだ学生だったのですが、“マンガ以外の本は読まない” という妙なポリシーを持っていまして・・・(苦笑) それが、写真について色々知りたくなってきて、写真に関する文庫を読み始めたりしていた時期が、そうですね、2001年の夏頃でしたね。ちょうど学生最後の個展を11月の学祭で開くことにして、そこで写真を展示即売して売れたら、その売上でなにか写真集を買おうと決めたんです」
―――どの写真集かは決まっていなかったのですか。
「実は当初は、ちょうどその頃に出た岩波の『アンセル・アダムス写真集成』が欲しくて、それを買おうと決めていたんです。でも、売上はそこそこあったのですが、額などもそろえたので出て行くのも多くて、16,000円もする写真集を買うのはきびしかったんですよ」
―――なるほど。ではなぜ『パリの肖像』を選ばれたのでしょうか。
「3点あるとおもいます。まずは、値段がアンセル・アダムスに比べれば安かったこと。つぎに、当時読んでいた写真に関する本のほとんどに、ナダールが載っていたこと、しかもページの最初の方にね。あとは、自分に関することですが、それまで主に『猫』を題材に撮っていて、学生最後の写真展を区切りにして、つぎは『人』を撮りたいと思っていたこと。ナダールは人を撮る肖像写真の元祖みたいな扱いだったので、まずは基本の基本を抑えねばと、教科書的に『パリの肖像』を購入するに至りました」
―――その3つの要素がナダールを選ばせたということですね。
「そうですね、あ、あとは『PHOTOPOSHE』シリーズのナダールが絶版で在庫を探してもらってもなかったから、というのもあります(笑)」
―――なんだか次善の次善の選択のような感じですね(汗) ともかく、初めて手にした写真集の印象はいかがでしたか。
「写真集というか、図鑑という感じがしました。著名人の図鑑ですね。小学校の図書館に置いてあるような感じとでも言えばいいでしょうか・・・ 少なくとも写真家の作品集としてまとめられている印象は受けませんでした。原版が痛んでいるものも多くあって、正直ちょっと期待はずれでしたね」
―――なんだか一冊目でつまづきがあったようですが、その後に続く写真集購入に影響はありましたか。
「本当は続編の『ベルエポック』も買おうと思っていたのですが、定価で買うのは止めにしようと思いました(笑) で、オークションで探したりしていたのですが、なんと『パリの肖像』が2,500円で出てるのを発見しまして、さすがに後悔を禁じ得なかったですね・・・ 買う前に探したときは出てなかったんですよ(涙) しかし、マンガだらけの本棚の中に、一冊だけ写真集があるというのも落ち着かない感じがして、ある程度の冊数が欲しいとは思っていました」
―――その感じ、分かる人には分かる感覚でしょう。それが、他の写真集も集めていく原動力になったのですね。
「ええ、ただ、金銭的な余裕はないにも関らず、写真集って高いじゃないですか。今は必ずしもそうは思いませんが・・・ ですから、オークションや古本屋で少しづつ、といった感じですね。全くしらない写真家の写真集でも安ければ買う、という勢いで増やしていました。今は60冊くらいで、本棚を一列埋めているので、見栄え的には満足しています(笑) これからは値段よりも質にこだわっていきたいと思っています。自分が“良い”と思って、清水の舞台から飛び降りる気持ちで新刊で買った写真集が後で賞を取ったりなんかすると、古本で買うのとはまた違った喜びや発見があるんですよね」
―――なるほど、まだその辺りのお話もありそうな感じですが、そろそろお時間のようですので、またの機会にあらためてじっくりとお聞きしたいと思います。どうも、今日はありがとうございました。
「ありがとうございました」
―――写真史のトップを切って登場する写真家、肖像写真の元祖と称されるその写真家が残したのはたくさんの有名人の写真。世界的に有名な人物をこれだけ写真に収めた人がいるでしょうか。
一人一人、撮った写真を並べただけで当時の有名人図鑑となる写真集。時代の寵児達を記録した彼もまた時代の寵児だったに違いありません。『パリの肖像』、ナダール、栄光の一冊。
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